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ZEH(ゼッチ)とは? | UA値(外皮平均熱貫流率)とηA値(平均日射熱取得率)を計算してみよう #3

ZEH(ゼッチ)とは? | UA値(外皮平均熱貫流率)とηA値(平均日射熱取得率)を計算してみよう #3_イメージ画像

こんにちは、設計の吹上です。(フキアゲと読みます)
この回ではUA値とηA値の計算方法についてお話していこうと思います。
まずは少しだけ、前回の復習をしてみましょう。

| 前回の復習

ZEHで補助金をもらうためには、1. 住宅の性能を一定のレベルにする必要があり、その上で2. 消費エネルギーを正味ゼロにしなければなりませんでした。そこで性能レベルの基準となるのが「平成25年省エネ基準」ですが、ZEHではこの基準よりも厳しい数値を求められます。具体的には以下3つの基準を満たす必要があります。

① 外皮平均熱貫流率 UA値0.60W/㎡K以下
② 夏の平均日射熱取得率 ηA値2.8以下
③ 一次消費エネルギーを「平成25年省エネ基準」より20%削減

ちなみに、ZEHより少し基準が優しい「平成25年省エネ基準」ですが、2020年からは義務化され、住宅を建てる際には必ず守らなければならない性能基準になります。以上が前回の復習です。


さて、ここからは「UA値やηA値とは何なのか?」そして、「この値が変わるとどうなるのか?」大輪建設で実際に使用している、PCソフトの画面と合わせて解説していきたいと思います。

| UA値とは? ηA値とは?

UA(ユーエー)値:外皮平均熱貫流率

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外皮平均熱貫流率UA値は、家全体の熱の出入りのしやすさを表しています。主に外壁や屋根、床などの外皮に求められる性能の数値で、外に出て行く熱量(熱損失量)を外皮等面積(※1)で割った値です。数値が小さいほど熱の出入りが少なく、断熱性能が高いということになります。

ηA(イータエー)値:平均日射熱取得率

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平均日射熱取得率ηA値は、家全体の太陽光の室内への取込みやすさを表しています。主に窓に求められる性能の数値で、室内に入り込む日射量を外皮等面積(※1)で割った値です。数値が小さいほど日射熱の侵入を防ぐことが出来るということになります。

(※1)外気に接する床や天井、壁のことです。土に接する土間や、玄関の基礎の立上がりも含まれます。家を包み込むような「外皮」をイメージしてもらうと、分かりやすいかもしれません。

| Energy ZOO(エナジーズー)を使って断熱性能を数値で見てみよう

UA値とηA値が何を表すのかを知って頂いたところで、ここからが本題です。
断熱性能を数値で見ていくわけですが、今回は大輪建設で実際に建てた、あるお宅の仕様を見本に解説していきたいと思います。

大輪建設ではUA値とηA値を計算するのに「Energy ZOO(エナジーズー)」という専用のPCソフトを使用しています。壁の厚さや断熱材の種類、窓の大きさなど様々な情報を入力することでZEHの基準に対して「適合」か「不適合」かを判定してくれるというシステムです。

さて、まずは結果からご覧下さい。

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季節は夏。注目してもらいたいのは、上2行の数字です。

外皮平均熱貫流率(UA) 0.55W/㎡K
冷房期の平均日射熱取得率(ηA) 2.4

この値がZEHの基準値を下回っていれば、キリンさんが「適合!」と教えてくれます。

では、「不適合」となってしまった場合、何が数値に影響しているのか。どうやってそれぞれの数値を小さくしていくのか。次で見ていきましょう。

| UA値の計算

UA値は、主に外壁や屋根、床などの外皮に求められる性能の数値です、と前述しました。まずは、外壁に絞って数値を見ていきたいと思います。

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左から外壁の構成、材料、厚み。外壁1つとってもこれだけの情報を入力する必要があります。これらを計算して外壁の熱貫流率を求めるわけですが、ここで必要になるのが熱伝導率その厚みです。

新しい言葉が出てきましたが、「熱伝導率」とは材料の熱の伝わりやすさのことで、その材料の断熱性能を表します。数値が大きいほど、断熱性能は低くなります。

勘違いされる方も多いのですが「たいして厚みがなくても、性能の高い断熱材を使っているので、断熱はしっかりできている」というのは、少し間違っています。断熱材の性能(熱伝導率)厚みの両方があって初めて外壁等の断熱性能を評価することが出来るのです。

熱貫流率を求める計算式はこのような形になります。

熱伝導率 ÷ 厚み = 熱貫流率

では、外壁を断熱材の厚みを変えて数値の違いを見てみましょう。

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上の画像では、断熱材の厚みを70mm減らしています。熱貫流率の結果を比べてみると、その差は0.71W/㎡Kもありました。

断熱材が同じでも70mm減らすと熱貫流率が変わるのが分かると思います。やはり厚みは熱貫流率に大きく影響するようです。もちろん判定は「不適合」。キリンさんも悲しそうです。

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断熱材の性能だけではなく、どのくらいの厚みで入れるかということが大切です。

さて、外壁だけではなく、床や屋根についてもそれぞれ同じように熱貫流率を求めていきます。さらに、それぞれの熱貫流率と面積から、熱損失量を求めます。

(外壁/床/屋根いずれかの)熱貫流率 × 占める面積 = (外壁/床/屋根いずれかの)熱損失量

最後に、外壁・床・屋根それぞれで求めた数値と外皮等面積から、いよいよ外皮平均熱貫流率が求められます。

(外壁/床/屋根すべての)熱損失量 ÷ 外皮等面積 = 外皮平均熱貫流率UA値

この外皮平均熱貫流率UA値が、基準のUA値0.60W/㎡K以下でなければなりません。最後には総合的な数値で判断するため、外壁の数値ばかり良くても、屋根で数値が悪ければ「不適合」となってしまうのです。

| ηA値の計算

ηA値は、主に窓に求められる性能の数値ですと前述しました。まずは、場所を家の中のある一カ所の窓に絞って数値を見ていきたいと思います。

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平均日射熱取得率(ηA)を求める上で重要なのが、窓の日射量です。ひとつひとつの窓の性能(η)面積方位からそれぞれの窓の日射量を求めます。

計算式にするとこのような形になります。

η × 面積  +  η × 面積  +  η × 面積  +  …  =  すべての窓の日射量

さらに、ガラスを複層ガラス、またはLow-Eガラスにして性能を上げることで、η値を減らすことが出来ます。

最後に、上で求めたすべての窓の日射量と外皮等面積から、平均日射熱取得率を計算します。

すべての窓の日射量 ÷ 外皮等面積 = 平均日射熱取得率ηA値

逆に、窓を増やしたり、南向きに開口を設ければ日射量も増え、それだけηA値も上がることになります。どの方位にどのくらいの窓を設けるかが大切です。

| 最後に

ここまでUA値とηA値ついて詳しくお話しました。もうさっぱり分からない!という方もいらっしゃるかもしれませんが、これらの計算は私たち設計士が責任を持って計算し、プランに反映していきますので、どうぞご安心下さいね。

次回は、皆さんが気になる補助金の話です。ではでは、次回のブログをどうぞお楽しみに!

次の記事はこちら
#4:ZEH(ゼッチ)とは? | ZEHで補助金をもらう方法「ZEHビルダー」とは?

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#1:ZEH(ゼッチ)とは? | ZEHの背景と日本の取り組み
#2:ZEH(ゼッチ)とは? | エネルギーの自給自足

 

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